□『わたしたちが正しい場所に花は咲かない』アモス・オズ著、村田靖子訳
■白黒づけに躍起になるな
「おや?」と思わせるタイトルである。「わたしたちが正しい場所」とは、どこなのだろうか。自分は間違っていない、悪いのは相手の方だ、あいつらが考えを変えるまで絶対に許さない…。そう考える人は世界中にいるだろうし、わたしたちの心のなかにも、自分を正当化しがちな部分があるに違いない。自分と意見が異なる人を認めるのは難しい。「敵」の気持ちを想像するのは、至難の業だ。
原著のタイトルは、「狂信主義への処方箋(せん)」。9・11のテロ事件の原因を、著者のオズはよく言われるようなイスラム原理主義と西欧社会との対立ではなく、主義のために命も惜しまない狂信主義者の存在に見ている。主義や信仰を持つこと自体を否定するわけではないが、それが行き過ぎて他者の主張を認めなくなることに激しい危機感を抱き、狂信への免疫として、想像力とユーモアを持つことを提唱している。
そのように書くオズ自身が、若いころは狂信的なシオニストだったという告白は興味深い。自分の正しさを信じていたオズが、複数主義に目覚め、平和の大切さに気づいていく。
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